2009年3月7日 (第2887回)

日本社会の混迷と転換の可能性 ― 「男女共同参画」の視点から

法学部 教授 岡野 八代

 99年男女共同参画社会基本法制定より10年が経過しました。ところが、国際的な比較をみてみると、女性の政治・経済領域への参加度を示すジェンダー・エンパワメント指数は、04年の38位から06年42位、そして08年には93か国中52位と依然として低迷しています。

  世界的な経済不況にみまわれるなかで、若年男性が大きくクローズアップされるワーキングプアは世間の注目を集めるようになりましたが、他方で、シングルマザー世帯はつねにその半数が貧困世帯であったことに代表されるような、日本社会につねに存在していた女性の貧困問題はほとんど社会問題化しません。

  子育て、教育問題、労働問題、そして介護問題と、わたしたちの生活が家族を中心に営まれている限り、そこには必ずジェンダー関係が絡んでいます。給付金にみられるように、国民意識からかけ離れた政治が行われている今こそ、家族のなかのジェンダー関係を見直しながら、わたしたちは政治に何を求めるべきなのかを真摯に考える時なのでしょう。