2005年7月30日 (第2737回)

わが国における外国人犯罪の問題

大学院法務研究科 (法科大学院)教授 上田 寛

  外国人犯罪は本当に増加しているのか。

 そのような問いかけ自体、「何をいまさら、わかりきったことを」といわれそうですが、じつは、そのことを客観的な事実として示す資料も、評価するための指標も、存在しません。

 統計上、「凶悪犯」として検挙される外国人が顕著に増加しているのは強盗罪だけですが、この間、日本人の強盗も増えているのです(1994年から2003年までの10年間に検挙人員で約2倍、検挙件数で約1.8倍)。

  これに加えて、来日外国人の強盗事件の場合の共犯率の高さ、1人当たり件数の多さ(丁寧な取調べの反映です)などを考慮すると、外国人による凶悪犯罪の激増という評価には疑問を覚えざるをえません。

 本当に注目すべきなのは、そのような、いわば、量の問題ではなく、外国人犯罪の質の変化だと思われます。つまり、個々の外国人犯罪者ではなく、その組織化に、外国人犯罪組織とわが国の犯罪組織=暴力団、外国の犯罪組織、この3者の連携の発展の兆しにこそ、真の危機の萌芽が存在するのです。

  それがどのような意味において「危機の萌芽」であるのか── 明らかにしなければならないのは、このことです。