2005年8月27日 (第2740回)

技術経営戦略入門 ―次世代薄型テレビやデジタル家電開発事例から―

MOT大学院 テクノロジー・マネジメント研究科長/教授 阿部 惇

 わが国は長く続いてきたキャッチアップ型からお手本の無いフロントランナー型経済社会への転換期にあり、中国・韓国・台湾などの猛追も受けております。

 このような経営環境の中でどのようなビジネスモデルを構築すれば勝ち組になれるのかを薄型テレビやデジタル家電を事例にお話ししたいと思います。

 商品に使われる中核技術がアナログ技術からデジタル技術に転換したことが、企業競争力低下の大きな要因になっています。アナログ技術はコツコツと地道に積み上げていくことで優れたものに仕上げていくという点で日本人が得意とする技術です。

 一方のデジタル技術はそのような蓄積が不要な技術で、あっという間に真似されるという性格を持った技術です。アナログ技術を文化、デジタル技術を文明と位置付けることができると思います。

 アナログ技術は企業の独自性を出しやすいのですが、デジタル技術はコピーが容易な技術ですのであっという間に世界に広がります。デジタル技術を使った商品はコモディティ(汎用品)化しやすいという性格があります。

 以上のようなことから、企業が継続的に競争力の高い商品・事業を創出していくための技術経営戦略がますます重要になってきました。