2010年5月8日 (第2935回)

在日ノンジャパニーズ日本研究家が見た北原白秋

文学部 教授 チャールズ・ フォックス

 北原白秋(明治18年?昭和17年)は明治末期から昭和前半まで詩、短歌、歌謡、童謡、民謡、俳句と多彩に活躍した、いわゆる「総合詩人」であった。 彼の五十七年間の人生は広い意味の「詩」のために生きたと言っても誇張ではなかろう。裕福な造り酒屋の長男として九州の柳川に生まれて早い時期から詩や短歌の創作に没頭して、 学校の他の勉強は眼中になかった文学青年であった。中学を中退し上京してすぐに『文庫』、そして『明星』に作品を発表し、文壇に認められた。 数年後、詩集『邪宗門』や『思ひ出』、短歌集『桐の花』を刊行し、彼の偉大な才能を示した。

 外国人日本研究家がこのような作家を研究対象にしても日本人研究家のそれと同じであるが、「白秋観」は必ずしも同じではなかろう。 その外国人の育った環境も言語世界も受けた教育も異なるので,当然のこととして作品の読み方も違うはずである。 私の「白秋観」を紹介しながら世界の舞台での白秋はなぜ意味深いのかに焦点を当てるつもりである。

聴講者の感想

 短歌というと日本人はどうしてもその時おかれていた作者の状況から研究する「作家論」が多いと感じていましたが、 今日先生のお話を聞いて作者から切り離して作品を考えるやり方を知り、そのような研究も大切だなと思いました。 日本人とか、その他の国の出身とか関係なくやはり作家と作品を切り離す研究はやっていかなければならないと思います。