2010年5月29日 (第2938回)

在日アメリカ人社会言語学者が見た日本の単一文化論

関西大学文学部 教授 野口 メアリー

 日本人は単一民族であり、日本の文化は基本的に一つであるという見解は、日本国内外に広く持たれている。 しかし、多く社会言語学者たちは、古くからアイヌと琉球の文化が国内に繁栄したことや、在日朝鮮人と華僑の人口も無視できないと論じてきた。 さらに、日本に新しいバイリンガル・バイカルチュラルな人々が20世紀の後半から増加してきた。例えば、国際結婚から生まれた「ハーフ」、帰国子女、 日系ブラジル人とペル人の子どもたち、残留孤児の家族、留学生などである。この動向が勢いを増している現在、日本の単一民族論・単一文化論は時代遅れだと言っていいだろう。 このため、日本の教育機関は、多様な言語と文化を有する生徒を対象にするために、基本理念を再検討する必要がある。統一化から多様性の尊重へ転換を目指すべき時期になった。 多様な言語、文化とアイデンティティを有する生徒が日本の社会に心地よくとけ込み、貢献できるような教育論が必要である。

聴講者の感想

 本日のお話から2つのことを学びました。ひとつは日本は単一民族ではなく、アイヌ・沖縄など少数民族が現実に存在していること。 そして、かつては少数民族の方言が使用禁止された時代があったこと。ふたつは、在住外国人が増加し、学校が多様化していることです。

 問題は、少数の人達でもその出身の国の言葉を尊重し学校でその国の言葉をし

っかり教育する体制が非常に重要ではないかと思います。

 もちろん教える人、経費など様々な課題があるでしょうが、多言語を「資源」とする国づくりのためにも、二つの言語の発展を目標とする教育制度の確立が期待されます。

 日常の視点とは違った観点からのお話で勉強になりました。ありがとうございました。