2010年6月12日 (第2939回)

憲法9条と日米安保体制―その原点と現点-

法学部 教授 中島 茂樹

 平和的生存権を保障し、戦争放棄と戦力不保持の立場に立つ憲法9条の下で、内閣法制局は、「自衛のための必要最小限の実力装置」である自衛隊を合憲とし、 海外での武力行使につながる集団的自衛権の行使を違憲と答弁している。

 それにもかかわらず、2001年9月11日の米同時多発テロを受けたアフガニスタン攻撃とこれに続く2003年のイラク開戦を契機に、 「ショー・ザ・フラッグ(日の丸を見せろ)」や「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上部隊を派遣せよ)」をキーワードとした「米国の指示」に答え、 または「米国を忖度」する形での自衛隊の海外派兵の展開により、日米軍事一体化はその緊密度をいちじるしく強化してきている。

 日米安保条約が軍事同盟条約である限り、日米両国に「共通の敵」が存在していなければならない。その「敵」はどこにいるのか。 沖縄の普天間基地に駐留する海兵隊は「いかなる敵」に対処しようとしているのか。憲法9条と日米安保体制について、その原点と現点の検討をふまえ、わが国の安全保障のあり方を考えてみたい。

聴講者の感想

 日米安保のこれまでとこれからについて、大変分かりやすく、有意義な時間となりました。私は日本は北朝鮮の脅威にさらされているとは考えられません。 確かに核開発を行い、独裁国家であり、拉致も行っている国です。しかし、北朝鮮が核弾道ミサイルを実際に日本に打ちこむことができるかと言えば、それはありえないと思います。 それはあくまで外交カードの1つであり、彼らが欲しいのは支援なり、譲歩であると思います。日米安保はすでに今年で50年目を迎えます。 冷戦が終了した今、安保のあり方も見直すべきだと思います。冷戦後に生まれた私にはどうしても“米国に守られている感覚”が理解できず、安保の必要性もあまり感じられません。 これからの時代を担っていく世代である私たちは、できれば軍事力に頼らない国際関係、国際社会を目指していきたいと思います。

 本日は貴重なお話ありがとうございました。