2005年9月24日 (第2744回)

新しい人間モデルと人材マネジメントの課題

経営学部教授 渡辺 峻

 人材マネジメントのあり方は、その前提になる人間モデルとの関連にて、歴史的に発展してきた。これを、大きく括れば、経済人モデルを前提にしたあり方(アメと鞭)、社会人モデルを前提にしたあり方(気分・感情による動機づけ)、自己実現人モデルを前提にしたあり方(仕事の生きがい・やりがいによる動機づけ)として発展した。これがこれまでの経営学の通説である。

 いま、いわゆる新しい働き方・働かせ方の問題が浮上している。そこでは、職業生活のみならず家庭生活・社会生活・自分生活という4つの生活の並立・充実に動機付けられる「自立した個人」「社会化した個人」とでも言うべき新しい人間モデルが創出・登壇しつつあり、それに対応して、個人・企業・社会のバランスを考慮し4つの生活の並立・充実で動機付ける「社会化した人材マネジメント」を導入しつつある。

 「両立支援」「ファミリーフレンドリー企業」「ポジティブアクション」「育児介護休暇」「ボランタリー休暇」など「4つの生活の並立・充実」がなければ個々人を動機づけ組織貢献に統合できない時代になった。

 近年の歯止めの効かない少子化の進展は、このような「社会化した人材マネジメント」の導入に拍車を掛けている。