2005年10月1日 (第2745回)

ストック公害問題の責任―アスベスト問題を中心に―

本学客員教授/ 前政策科学部教授 宮本 憲一

 日本は世界でも稀な公害問題の深刻な発生をみました。幸いに国民の世論と運動によって、SOxの大気汚染や水俣病などの重金属汚染などは防止ができました。

 こういう生産過程で発生する「フロー公害」の多くは解決したのですが、「ストック公害」とよべるような産業廃棄物の公害などが深刻となっています。アスベスト災害もそのひとつです。

 これはフロー公害とちがい、長期にわたって被害をもたらすだけでなく、汚染者が廃業していたり、被害者がどこで被害を受けたか解らないという点で、いままでにない困難な問題をふくんでいます。

 実は、地球環境問題のひとつである温暖化ガスも同じくストック公害です。産業革命以来蓄積してきたCO2やフロンガスなどが温暖化のひき金になっています。

 公害をなくすには、情報を公開し、基本的人権を守る行動が必要です。沈黙していては公害は防げません。これが日本の公害の歴史的教訓です。