2005年10月8日 (第2746回)

アスベスト問題に見る建築材料規制政策の課題

政策科学部教授 石原 一彦

 アスベストは、健康・生命に対する影響を除けば、非常に優れた建築材料です。防火性・耐火性、断熱性、吸音性・遮音性などの性能に優れ、加工性もよく、安価であったため、多様な建築材料として使用されてきました。

 しかし、1972年にILO、WHOにおいてアスベストに発がん性があることが認められ、その後西欧諸国等において規制策がとられ始めました。

 我が国においても、大気中の濃度調査等の実施、段階的な排出規制の実施が行われましたが、西欧等の規制政策に比べて遅れた感は否めません。住宅の分野では2000年より住宅性能表示制度がスタートし、シックハウスの原因物質とされるホルムアルデヒド等を含んだ建築材料の使用表示などがされるようになっていますが、我々の身近な建築においてどのような建築材料が使われているかを知ることは一般には困難なことです。

 本講座では、建築材料としてのアスベストの特徴、アスベスト規制の経緯、既に使用されているアスベスト対策(除却方法)について説明した上で、アスベスト問題から建築材料規制政策の課題について考えます。