2011年1月22日 (第2964回)

デジタルアーカイブから見えてくるもの 埋もれていた〈海外で活躍した日本人〉の再発見

グローバルCOEプログラム「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点」PD 彬子女王
立命館グローバルイノベーション研究機構PD 前崎 信也

 立命館大学アート・リサーチセンターは、欧米の美術館・博物館に収蔵されている日本美術作品のデジタル・アーカイブ化を進めています。 各地での調査時には薄暗い収蔵庫の片隅で何十年と忘れられてきた逸品との出会いがあり、そういった発見が新たな研究につながることも少なくありません。 今回の講座では、その大英博物館での調査の中で出会った2人の日本人、古筆了任(1875-1933)と松林靏之助(1894-1932)の事績についてお話したいと思います。

 古筆了任は、1902年私費での英国滞在中に、大英博物館所蔵の日本絵画コレクションの調査を依頼され実施しました。 この時の記録が、後の英国における日本美術研究の発展に多大なる影響を与えたことが明らかとなりました。松林靏之助は20世紀の民芸運動とも深く関わりをもったイギリス人陶芸家、 バーナード・リーチ(1887-1979)の窯を建てた宇治朝日焼の陶工です。1924年、大英博物館に寄贈された湯呑茶碗の発見をきっかけに、多くの資料が発見され、 日本の近代窯業が欧米の陶芸史に与えた役割の大きさが再認識されるようになりました。

 講座では、日本ではほぼ無名の日本人古画鑑定家と陶芸家が20世紀初頭に英国で果たした知られざる功績についてご紹介します。

聴講者の感想

  コンピューター界における情報量は膨大であり、その利用には時として理非曲直が絡むが、もとより有益な展開を図るのが望ましい。また、情報はあくまでも使いこなすのが前提であるが、その方法として本日紹介されたビジュアライゼーションが有力な道具となるであろう。何故なら、視覚に訴える感性は直截で効果があり、真髄を捉えるモーメントを刺激し理解が容易になると期待できるからである。