2011年2月26日 (第2967回)

木が枯れる、それでも植えよう

日本バイオ炭普及会(JBA) 会長・大阪工業大学工学部環境工学科 客員教授 小川 眞

 二十世紀初頭以来、世界中でなぜか樹木が大規模に枯れる奇妙な現象が増えている。今、日本でもマツの枯れが次第に北上し、ミズナラやコナラ、シイなどの広葉樹も大量に枯れだしている。 亜高山帯の針葉樹やスギ、ヒノキなども衰弱し、タケにも異常が見られる。なぜ、こうなったのだろう。その背景には人間の生産活動に起因する水や土壌の汚染があるように思える。 その因果関係を調べて、炭で樹勢を回復させる仕事を永年手掛けてきたので、その経験を通じて森林再生の方法を紹介しよう。

 一方、昨年の猛暑に見られるように、気候変動は年を追って激化している。しかし、増え続ける大気中の温室効果ガスを削減し、固定する対策は未だにスタートしていない。 いったん放出された二酸化炭素を固定できるのは植物、とくに樹木だが、植林活動も採算性をうんぬんされて、産業植林以外ほとんど進展していない。 将来にわたって、地球の気候変動を少しでも抑えるためには、木を植え、炭を土壌に埋め込んで炭素の封じ込めを図る以外に、今のところ方法がない。 世界中どこでも、誰でも、いつでもできる方法を提案し、実行しているので、みなさんのご協力を期待する。ぜひ、議論よりも実践を。

聴講者の感想

 日本最初の世界森林研究機関連合の賞であるユフロ賞受賞者であり、世界的に有名な菌学者、菌根学者で、書斎の学問にとどまらず、野外、それも海外にまで活動の場を拡げている小川博士のお話だけあって、大変迫力があった。

 樹木と菌類と地球環境の壮大な関係を木炭を介した理論と実践で開拓する博士の活動が更に大きく発展し、世界の森林、ひいては緑の地球が守られていくことを期待したい。