2011年3月26日 (第2970回)

小笠原諸島の欧米系とグローバル・ヒストリーズ

文学部 教授 チャールズ・フォックス

 1830年にアメリカ人二人、イギリス人二人、デンマーク人一人、とハワイ出身のPacific Islanders二十人程がハワイを出て無人島であるボニン諸島(現在の小笠原諸島)に移住した。彼らは現在いわゆる「欧米系」と言われる島民の祖先である。1875?6年に日本が小笠原諸島に対する施政権を得て、拡大する日本帝国の一部にするのに成功した。その時に当時の既存島民は否応無く日本に帰化せざるを得なかった。1945年に琉球諸島や奄美大島と共に小笠原諸島の施政権はアメリカに譲られ、小笠原諸島は再び無人島になった。そして1946年に島に戻る権利が許されたのは129人の欧米系のみであった。小笠原/ボニン諸島は入植者がやって来て以来、二つの国民国家の間に翻弄されてきた。そしてそこに居住する欧米系の自己意識が島と連れ立って定まらなくなった。

 従来通りの環太平洋歴史に対する観点から見れば ? つまり国民国家の形成や発展に焦点を当てるなら ? 欧米系の存在は全く見えなくなる。昨年から立命館大学の国際言語文化研究所が連続講座のテーマとして「グローバル・ヒストリーズ」を選んだ。英語の複数形「ヒストリーズ」(Histories)としたのは世界全体に対する歴史観点は一つだけではないという主張からである。そして欧米系のようなグループの歴史を取り戻すために、今回私は「欧米系」のストーリーを伝え、また私の研究グループが現在収録しているドキュメンタリー映画を抜粋的に上映する予定である。ご期待ください。

聴講者の感想

 小笠原の(日本人に)知られざる歴史、数十年後には消えてしまうかもしれない小笠原の欧米系について、日本人は学ぶべきだと思う。複数の歴史について研究する「グローバル・ヒストリーズ」の試みによって、このような歴史が明らかになるとよいと思いました。

 フィルムが完成し、全国で上映されることを期待しております。