2011年6月18日 (第2980回)

白川静の『孔子伝』

大阪教育大学教育学部 教授 佐藤 一好

 白川先生の学問には、実は「遊」の精神が脈打っています。その生涯はいわゆる「芸に遊ぶ」ものであったと言えるでしょう。『論語』はもちろん、数多くの古典に遊び、築き上げられた壮大な学問体系。「彼の仕事を遠望するとき、流石に、少し泣きべそをかきそうになるのを、禁じえない」という吉本隆明氏の評語に、私も同感です。

 先生の「遊び心」は、『漢字百話』でわざわざ「字遊び」の項目を設け、『万葉集』の戯訓や唐代伝奇「謝小娥伝」の字謎等について解説を加えられているように、言葉遊び的な事象にも及んでいます。そこで、私も『古今灯謎薈萃』という本から、『論語』に関わる謎を一題出題しておきましょう。『詩経』にも用いられている「?」(草冠に辛)という字があります。この字から『論語』の有名な言葉を答えて下さい。正解は『孔子伝』を中心とする講義の中で…。

 『孔子伝』は刺激的ですが、少し難解かもしれません。橘曙覧の「たのしみは世に解きがたくする書の心をひとりさとり得し時」には至らないでしょうが、先生が示される孔子像の一端に迫りたいと思っています。「遊び」の要素も交えた講義になります。でも、白川先生ならきっと「莞爾として笑って」お許し下さるでしょう。

聴講者の感想

 学説とご自分の意見を明確に分けて説明があり、大変わかりやすかったです。

 字遊びがあり、楽しく時間が過ぎました。

 計画的な話の運びといい、白川先生のすごさ、すばらしさを述べつつ、佐藤先生のご研究の深さも窺い知れ、大変聞きやすく分かりやすく拝聴できました。