2011年6月25日 (第2981回)

白川静の漢字教育

四天王寺大学人文社会学部 教授 矢羽野 隆男

 白川博士は退職後に13年余をかけて字書三部作を完成させ、他にも講演など精力的に活動されましたが、最晩年に研究成果に基づく教材を作成されるなど、漢字教育への思いには篤いものがありました。〈系統的に学べば楽しく効率もよい〉との考えから構想は示されましたが、実際にはそちらまで手が回らなかったようです。しかしその思いは多くの協力者によって実践に移され、教材も開発されて今に至っています。

 白川博士生誕百年を機に立命館の東洋文字文化研究所とのご縁で、昨年11月、博士の故郷・福井県の漢字教育事業のお手伝いを致しました。福井では学校教育において白川学に基づく独自教材で漢字教育を展開、また漢字指導者を養成して県民に白川文字学の普及を進めています。お世話下さった県職員の名刺には何と甲骨文字が併記、福井は「漢字王国」―そんな強烈な印象を得た経験でした。

 今年2月、勤務校・地元市の共催シンポジウム「表現する力を育む」にパネリストとして参加した際、白川学による漢字教育に触れますと、僅かな時間にもかかわらず興味をもっていただけました。本講座は90分、白川博士の漢字教育構想、その実践展開などお話させて頂きます。

聴講者の感想

 福井県の漢字教育の教材の取り組みをご紹介いただきましたが、表意文字である漢字は、やはり、意味をわかりながら、体系的に覚えていくことは、とても良いことだと思いました。福井県のみならず、広く知られることがあれば素晴らしいと思います。

 小学生は毎日、1年生のときから、「漢ド」(漢字ドリル)の宿題に、イヤイヤ取り組んでいます。あの宿題が、楽しく覚えられるものになれば、子供たちは勉強が好きになっていってくれると思います。