2011年9月24日 (第2992回)

自立の人間学

文学部/応用人間科学研究科 教授 林 信弘

 人間とはまことに矛盾に満ちた存在である。真対偽、善対悪、正義対不正義、美対醜その他、解きがたい矛盾のなかに置かれている。その矛盾を深く見すえなければならない。そこから逃げたり、覆い隠したり、抑圧したりしてはならない。そういうことをすれば、かえってオカシクなるばかりである。最近、自立という言葉が医療看護や福祉、あるいは心理臨床や教育といった対人援助活動の分野のみならず、政治や経済といった分野においてもしばしば使われる。たしかに自立は今後ますます重要なキーワードになっていくのは間違いないであろう。しかしでは、人間にとって自立とは何かということになると、事はそう簡単ではないのである。ここでは、講師担当者自身のライフワークである意識研究の立場から、「意識統一」、「清濁あわせ呑む」、「存在論的感謝」、「調和的自己主義」、「死者と共に」の五点にわたって、思うところを話してみたいと思う。うまく行くかどうかは乞う御期待です。

聴講者の感想

 初めて土曜講座に参加しました。今まで存在も知らなかったので、たまたま興味のある分野の時に見つけられてよかったです。

 理解しているようで出来ていない自己についてを見つめ直し、それから自立するというステップを示していただき、5つの視点を通して、自己というものが少しだけクリアに見れるようになった気がします。自分の中の矛盾によって人は多くを悩むものだけれど、私はそれも人間らしくていとおしいなと思いました。