2011年10月1日 (第2993回)
明代白話小説の楽しみ -長編・短篇のさまざまな世界-
立命館大学文学部 准教授 廣澤 裕介
21世紀に暮らす私たちがホンを読むように、16世紀の中国人もホンの世界を楽しんでいました。いま日本のポップカルチャー、特にマンガを例に見てみると、スポ根・探偵もの・ラブコメ・歴史物・ロボット・ポルノなどなど、さまざまな作品があり、ジャンルで区別できないような魅力を持つものも多い。15~17世紀に多く成立した白話小説と総称される口語体で書かれた作品には、長編では『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『金瓶梅』『紅楼夢』があり、また短篇の作品も非常にたくさんありました。これらは明の時代の人から見れば、「現代的」で「大衆的」なポップカルチャーだったわけです。上記の長編小説は内容的にも壮大なスケールで、時にロマンを感じさせ、日本語で翻訳され、リライトされたものも数多く、ディープなファンを獲得しています。この講座では、あえて日本ではマイナーな短篇作品にスポットを当てて、長編作品の世界と対比しながら、すれ違いコント・変装・パロディ・戦う美少女など、その多様なエンターテイメントの世界に遊び、明代の人々の読書の楽しみについて考えてみたいと思います。
聴講者の感想
明代白話小説の楽しみというテーマでの講座を楽しく聞かせていただきました。小説には時代背景を知っていないと面白くない作品も、そこを知ればその作品の意味合いが出てくるということを再認識しました。私としては、スカッとする作品、肩のこらない作品、マンガ的な作品が、時代を飛び越えて主人公を変えて続いていくのかなと思います。