2012年5月5日 (第3013回)
環太平洋地域における第二次世界大戦と在外日本人: 敵国人となること、国を失うこと
立命館大学文学部 教授 米山 裕
環太平洋地域に居住する数百万人の在外日本人は、太平洋戦争に伴って生活世界を破壊され、複数の国家権力による財産の没収・放棄、強制的な立ち退き、収容所への移送と監禁、日本への送還等を体験しました。350万人(本土人口の5%)が本土に「還流」すると同時に、南北米とハワイに残った数十万人は日本との紐帯を断ち切って「日系人」(現地少数民族)となりました。2012年5月の土曜講座では、一次史料やフィールドワークに基づいて第一線の研究を進めてきた「日本人の国際移動研究会」のメンバーが、各地の日本人・日系人が緊急事態にどのように対処したのかについて、ハワイ、カナダ、アメリカ合衆国(本土)、南米に焦点を当ててお話しします。カナダとアメリカ合衆国では、国家権力のあり方(英連邦の一員であるカナダと独立戦争を経たアメリカ)、中央政府と地方政府の関係、人種的少数集団に対する諸権利の付与など、大きな違いがあり、それが戦争中の強制移動・収容体験の違いをもたらしたことがわかります。また、ハワイや南米のように、国家権力が未成熟な地域では、政府に大規模な強制収容を実行する能力や意思がなく、日本人・日系人のほとんどが厳しい監視下のもとに生活を続行したという特徴を持ちます。
聴講者の感想
戦争は、人間をおかしくする。強者が弱者を踏みにじる。二度とおこしてはいけないことを再確認した。現在は局地戦以外の戦争は破滅につながるから起こりえないであろう。前の大戦は帝国主義的領土獲得競争。今は確実に領土がなくとも、資本が国を支配できる。血が流れないのは良いことではあるが。