2012年5月12日 (第3014回)

鉄条網なき強制収容所: 第二次世界大戦下の日系カナダ人

同志社大学言語文化教育研究センター 教授 和泉 真澄

 カナダは建国以来、少数派であるフランス語系住民に言語や宗教、独自の文化を保持する権利を認め、また、世界各地から移民や難民を積極的に受け入れ、世界に先駆けて「多文化主義」を導入するなど、アメリカ合衆国と比較して、「人権や多様性に寛大な国」というイメージを国内外から持たれてきました。ところが、近年、アジア系に対する歴史的政策に関する研究が進むにつれて、「白人の国(White Canada)」を保つというイデオロギーに基づき、アジア系に対してさまざまな排斥や差別、迫害が行われてきたことが明らかになってきました。第二次世界大戦中および戦後数年間において、日系カナダ人に対してとられた政策は、その中でも最も過酷なものとして現在では知られています。家と財産を奪われ、カナダ各地に追放された日系人に対する政策がいかにして実施されたのか、追放された日系人はどのような体験をし、どのようにその苦難に立ち向かったのか、アメリカ本土の日系人の体験と比較しながら、解説していきます。

聴講者の感想

 今回の講座を通して、初めて日系カナダ人の歴史を少しではありますが知ることができました。出身地域によって強みを生かした職種で居住地域が分かれている所が興味深いです。日本人は不遇な時期、加害の歴史もありますが、世界各地で開拓、産業への貢献をしているのも真実であると思います。

現代の日本でも外国人に対する偏見や差別は至るところにあると感じます。実際に被害にあわないと理解できない部分もあると思います。

いつかは国境が無くなったり、人種の間の争いも少なくなると思いますが、過去の歴史を学び、伝えていく事が大事であると思います。

この講座を通じて各国の日系人の歴史や、日本軍が占領下で行った支配的な行為も知りたいと思いました。