2012年5月26日 (第3016回)
第二次世界大戦前後の南米日系人の動向: ブラジルの事例を中心に
ブラジリア大学文学部 准教授 根川 幸男
世界最大の日系社会を有し、人種的偏見が少ないと言われるブラジルでも、1930年代には黄禍論が猛威をふるい、第二次世界大戦中には多くの日系人(移民とその子どもたち)が「敵性外国人」として迫害されました。反面、多くの日系人がこの時期にブラジルでの社会的・経済的基盤を形成しました。また、戦後のブラジルでは、日系人が「勝ち組」と「負け組」に別れ、敗戦の受け入れをめぐって、ホスト社会を巻き込む抗争に発展しました。こうした30年代から大戦を経て戦後にいたる時期の、ブラジルをはじめとする南米日系人の動向は、日本、アジア、北米など国際社会の動きと強く連動していました。この講義では、何人かのブラジル日系人の体験を皆さんといっしょにたどっていくとともに、ペルーやアルゼンチンの事例を確認します。それによって、大戦前後の南米日系人の多様な状況をご紹介し、「日系市民」が形成されていく過程やメカニズムについてお話したいと思います。
聴講者の感想
第二次世界大戦と言えば、日本と諸外国との戦局に関心が向いてしまいがちですが、その背後にひそんでいた問題(=日系人の動き)を知ることができ、第二次世界大戦への理解が深まると同時に、日本人一般に対する見方も少し変わった気がします。