2012年6月30日 (第3020回)
パレスチナ問題の現場から: 遠ざかる和平とその実態
立命館大学衣笠総合研究機構 ポストドクトラルフェロー 金城 美幸
1993年、イスラエルとパレスチナ解放運動(PLO)との間で「オスロ合意」が結ばれ、パレスチナ暫定自治政府の設立が合意されました。日本をはじめ国際社会は、これを歴史的和解として歓迎しました。しかし和平はその後とん挫し、20年経った現在も情勢は混迷を極めています。
パレスチナ問題についての一般的な説明は、ホロコーストによって多くの同胞を失ったユダヤ人が聖書時代からの約束の地にイスラエルを建国し、これに反対するパレスチナ人との間で民族対立が起きているというものです。しかし実際には、独立国家を維持するイスラエルに対し、イスラエルの支配下に暮らす、あるいは難民となってアラブ諸国に暮らす離散状況のパレスチナ人が諸権利を要求しているのです。
オスロ和平プロセスについても両者の非妥協こそが原因とされますが、その根本的な問題とは最も苦しい立場に置かれたもの、すなわち現在では450万人以上を数えるパレスチナ難民たちの権利要求が退けられている点にあります。そのため、歴史を振り返りながら和平の破たんの原因を具体的に述べ、破たんの現場でいっそう強まるイスラエルの支配体制について映像を交えてお話しします。
聴講者の感想
一般の民衆(イスラエルもパレスチナも)は、交流していないのだろうか。戦前・戦中の日本が(日本の民衆が)、朝鮮人、中国人を感情的にも受け容れなかったり、アメリカ人を感情的に敵視したような価値観を持たされているのだろうか。また、宗教も絡むのか。両者の反目が大衆的なものなのか、一部の権力者や権益者がつくり出しているものなのか。世界の平和をつくり出すのは、最後は民衆(私たち)の願いだと思うのだが。