2012年7月21日 (第3023回)
唐宋詞―純粋なる抒情の世界
立命館大学文学部 教授 萩原 正樹
私が今回取り上げます詞というジャンルは、中国の唐に始まり、宋の時代に隆盛した韻文ですが、日本では高校までの漢文教育においてほとんど扱われないため、一般にはあまり知られていません。ですが中国では教科書にも載っているポピュラーな文学様式です。詞は宋代に最も盛んに作られましたが、宋以後も多くの作者が現れ、また現代でも詞を作ったり、その文学を楽しむ人は多く存在し、およそ千年以上にわたって中国の人々を魅了してきた文学ジャンルと言えるでしょう。古くから中国の詩文に親しんできた日本人として、その文学的な魅力を知らぬままでいるのは大変惜しいように思います。
詞は音楽に合わせて歌われた歌辞文芸であるため、形式と内容両面においていわゆる漢詩(古詩や近体詩等)とは異なるさまざまな特徴を持っています。今回はその特徴について概説したあと、時間の許す限り作品を紹介し、その魅力を味わって頂きたいと思います。今回の土曜講座「中国の古典歌謡」のどの回でもそうですが、ひょっとすると、これまで持っておられた中国の詩に対するイメージがガラリと変わってしまう体験をされるかもしれません。
聴講者の感想
お話はとてもわかりやすかったです。詞が流行したのは「胡楽」がめずらしく新しく受け入れられたことが大きな要因ではないでしょうか。また、いつの時代も新しいものはめずらしがられ、一般化するとあきられるという道をたどったのでしょうか。