2012年7月28日 (第3024回)
元明の散曲―甘やかな恋の歌
立命館大学衣笠総合研究機構 ポストドクトラルフェロー 平塚 順良
チンギス・ハーンが、西暦1206年にモンゴル帝国を建国し、そしてモンゴルの騎馬軍団が中国の地にも押し寄せた頃、中国では散曲という新しい歌謡文芸が大流行しました。その流行は、その後、王朝の交代を経ても、絶えることなく続きました。ではその散曲は、流行の当初、一体どのようなメロディにのせて歌われていたのでしょうか。実は、そのメロディはすでに失われてしまい、今となっては聴くことができません。しかし我々は、現在でも、残されたその歌詞を読むことができるのです。その歌詞はたいへん甘やかに恋を歌いあげ、今にも当時のメロディが聴こえてくるような錯覚に襲われることがあります。
今回は、ラブレターに関する歌をまず紹介したいと思います。ある日、何も書かれていない白紙のラブレターが届くところからお話をはじめましょう。そこには一体どのような気持ちが隠されているのかを、みなさんと考えてみたいと思います。
その後、夜明け間近の恋人たちについて歌った作品を、いくつか紹介します。散曲の特色をよく表した、それらの作品群を読み解くことで、日本人にとって馴染みのうすいこの歌謡文芸に、少しでも親しみを感じていただければと思います。
聴講者の感想
中国の恋の歌をいっぱい知ることができて面白かったです。シェークスピアとの比較など、世界中の恋をうたった歌をもっと知りたくなりました。