2012年9月1日 (第3027回)

「東アジア低炭素共同体」構想と社会イノベーション

立命館大学政策科学部 教授 周 瑋生

 低炭素社会の実現は、人類社会が共通に目指すゴールである。しかし、日本はすでに世界最高の省エネ・高効率化を達成しており、また「福島原発事故」による原子力への不信などから、国内でのCO2を一層削減するにはコストが高く、日本企業の国際競争力の低下が懸念される。一方、中国は、2020年のCO2排出原単位を05年の40~45%まで削減する国内に拘束力のある自主目標を公表し、「5省8市」を低炭素モデルとし、具体的な政策を実施している。しかし、中国は削減ポテンシャルが高く、費用対効果が大きいものの、自助努力に技術的に経済的に限界がある。しかも経済成長・公害克服と低炭素化のコベネフィットが明確になると、これは低炭素化政策への強力なインセンティブになろう。そこで、革新的な技術の開発と適正技術の移転、経済と社会システムの変革及び戦略的イノベーションによる、国境を越えた広域低炭素社会(低炭素共同体)の実現が重大な課題となる。

 本講座は、日韓中三国の協同連携を事例として、広域低炭素社会実現の必要性と可能性を分析し、経済と環境を統合する国際互恵型「東アジア低炭素共同体」構想と、パイロッドモデル事業である「国際低炭素総合モデルパーク(大連旅順)事業を紹介する。

聴講者の感想

 原子力発電所をすべて廃止することが、いかに難しい問題であるかをあらためて感じました。これからの電気の供給はどうすべきか、ますます分からなくなってしまいました。
 日本がこれからどうなっていくのか不安です。