2005年11月19日 (第2752回)

社会経済史上の足利尊氏

立命館大学COE 推進機構教授/ 京都大学名誉教授 大山 喬平

 足利尊氏は室町幕府を創設して、鎌倉幕府の諸体制をひっくりかえした。世の中はたいへんにさまがわりをしている。政権をとってからの尊氏の行動は史料が多くて、詳細に知ることができる。

 今回は、こういう尊氏がどこからでてきたか、彼の政権奪取を支えた経済的背景をのぞいてみたい。下野国足利郡が彼の父祖の地である。平安時代のおわりごろ、すぐ隣の上野国新田郡に足利氏の弟が進出した。新田義貞の先祖である。

 鎌倉時代、足利氏は三河国と上総国に大きな拠点を築いている。そうした地域での族的結合や、一族の家産システムのなかに、激動の時代を乗り越えていった彼等の飛躍を支えたものが存在する。

 史料は必ずしも多いとはいえず、謎の部分も多い。しかしさまざまな困難を克服して、こうした面での研究は進展し、さまざまな事実がわかってきている。