2005年11月26日 (第2753回)

足利尊氏の文学的到達―夢窓疎石との交流を通して―

文学部助教授 中本 大

 多くの外国人が憧れる「日本的なるもの」の源泉は室町時代の文化と深いつながりをもっています。その室町時代の文化は足利将軍家と禅宗寺院との強い結びつきによって培われました。

 その代表が三代義満を中心とした北山文化であり、八代義政を中心とした東山文化です。

 では初代将軍の尊氏はどうでしょうか。尊氏と禅僧、特に夢窓疎石との関係はよく知られています。

 では具体的に尊氏は禅僧から何を学び、次代へ何を伝えたのでしょう。いや、そもそも尊氏は「文化人」だったのでしょうか。

 今回はこうした素朴な疑問を手掛かりに、尊氏の文学的側面について、特にその弟、足利直義との比較を中心に再検討してみます。