2005年12月3日 (第2754回)

アフリカにおける人間の安全保障―貧困と病からの脱出

中部大学 国際関係学部教授 峯 陽一

 人間の安全保障という考え方が、世界の注目を集めています。グローバル化の時代を迎えた今、内戦、迫害、病気、自然災害、大事故、経済危機など、人々をとりまくリスクは、きわめて多様化するようになりました。

 個人や市民社会、コミュニティが力をつけながら、こうしたリスクに共同で対処していこうとするのが、人間の安全保障の取り組みです。ひとりひとりが安心して暮らせる安全で平和な社会を築くために、今こそ、国境を越えた努力が求められています。  アフリカでは、人間の安全が強く脅かされています。20世紀半ばの独立の時代には想像もできなかった形で、内戦、エイズ、環境破壊などが、アフリカの街や村に襲いかかっているのです。アフリカは、平均寿命が以前よりも低下している世界で唯一の地域です。

 今回の講座では、まず貧困削減との関連で、人間の安全保障の考え方の新しさを皆さんにご紹介します。

 それから、30年にわたる戦乱から脱出したばかりの南部アフリカのモザンビークをとりあげ、地雷除去やエイズ、水害などのリスクに対して、国際社会とモザンビークの人々がどのように力をあわせているか、実例から学ぶことにしましょう。