2013年1月12日 (第3042回)

樹木ときのこ。そして炭の力。

京都府樹木医会 伊藤 武

 菌根とは植物の根とキノコ等の菌類が共存共生している組織のことである。マツタケ、ホンシメジ、ショウロ等は菌根性キノコと呼ばれ、マツの根に共生して土壌中で生育する。シイタケやナメコは木材を腐らせて分解し、栄養とする腐生性キノコと呼ばれ、工場生産規模の人工栽培も可能となっている。

 マツタケは菌根性のキノコであるが故に人工栽培は困難と言われているが人為的にマツタケの菌根をマツの根に形成させることができれば、マツ林をマツタケ山に変えることも夢ではない。また、菌根が付くと根は菌糸に覆われるために寒さや乾燥に強く、土壌病害等に対しても抵抗性が増してくる。この能力を利用して衰弱したマツの樹勢回復や海岸マツ林の造成作業が各地で進められているが、その現場で木炭の不思議な力が発揮される。木炭は高温で焼かれているため無機質な強アルカリ性の多孔質体である。清浄性、通気性、保水性に優れているため発根素材として、同時に特定菌根性キノコの生息環境としても申し分ない。