2013年1月26日 (第3044回)

持続可能な社会と非自由な世界-新しい公共を考える

龍谷大学政策学部 教授 富野 暉一郎
龍谷大学地域公共人材政策開発リサーチセンター(LORC) リサーチ・アシスタント 定松 功

 地方分権時代をむかえて「公共」とは何か、という問いが地域社会における「協働」をめぐって幅広く論じられています。その背景としては、明治維新から続いていた日本における中央集権・官主導型の体制が地方分権と規制緩和によって変化し、政府の役割が後退して地域社会や個人における自己決定・自己責任に基づく社会構造に向けた再編成が急速に進んだことであります。この社会構造転換は、明治維新以後百余年にわたって維持されてきた日本の後発資本主義国としての社会体制の根本的な変革を迫るものであり、また中央集権という現実によって抑制されてきた日本の戦後自治制度からの決別を、中央政府・地方自治体・国民の全てに迫るものです。

 その一方で、公共性を論じる基盤となる「公益」に関する現代的認識は、20世紀末から世界的規模でその限界性があらわになり、21世紀に入って全く新たなパラダイムが求められる時代に入ったと考えられる。ここでは新たなパラダイムとしての「構造化された公益」とそこから導かれる「新たな公共性」、そして新たな公共性から導かれる地方分権時代の「協働型公共サービス」のあり方について紹介していきます。