2013年8月3日 (第3065回)

学徒出陣-わだつみ世代の伝言 出陣学徒70年目の証言

立命館大学名誉教授 岩井 忠熊

 湖西に終の住処を定め、湖上の風景を眺めて暮らしている。そこには波を蹴立てて走るレジャーボートが目にうつる。私は敗戦時に多分あれより高速の爆装した小艇に乗り、上陸してくる米軍の輸送艦に体当たりするために待機する海軍少尉だった。

 私はもともとノンポリの普通の大学生だった。その私をこのような絶体絶命の境遇に追いやったのは、1943年の徴兵猶予停止という勅令によって海軍に入隊したことによる。今年があれから70年にあたる。次の80年には私の寿命は終わっているだろう。はずかしい体験だが、今のうちに若い人たちに語り伝えたいという思いにかられる。

 憲法改悪の動きが実現したら、いざという時に若い人たちが戦場にかり出されることを防ぎ止めることは、大変難しくなる。改悪を提唱する今の政治家たちは、自らは戦場におもむかない。ならば私たちかつての「学徒兵」は、直接に若い人たちに呼びかけることにしよう。