2005年12月17日 (第2756回)

クローニングと人間の安全保障―人間のモノ化の危険性の回避

国際関係学部教授 龍澤 邦彦

 我々が生きている21世紀は先端科学技術の時代であるともいえます。人間はエネルギー消費、コスト、そして特にリスクその他の点で大規模化する先端科学技術プロジェクトに対処するために必然的に国際協力を行わざるを得なくなっています。

 他方、これらの技術は、本来人類全体の利益を満たすためのものであるにもかかわらず、実際には、国家レベルならびに個人レベルで、これらの技術を保持し自由にできる者とそうでない者の間の格差を生じさせており、この格差が富める者と貧しい者という構図を定着させていっているのが現状です。

 現在の我々に課せられた課題は、この技術的格差を解消し、先端科学技術を適正に管理し、人類の共同利益のために使用し、その利益を人々に公平に還元していく国際協力に基づく制度を学際的な知識を駆使して作り上げていくことにあるでしょう。

 人類の未来はこのような制度を確立できるかどうかにかかっていると考えます。