2006年1月7日 (第2758回)

助ける科学はできるか?

文学部教授 望月 昭

 立命館大学「応用人間科学研究科」は発足して5年になりますが、当研究科では「対人援助」という実践的テーマのもとに、さまざまな領域から教員や学生が集い、共に「対人援助学」という新しい科学の創造に励んできました。

 対人援助=助ける、という行為はおそらく人類発生から存在した行為です。そして一部の生得的(本能的)行為を除いては、ヒト以外の動物では殆どみられない行動であると言われます。このかけがえのない行為についてこれまで真正面から取り組んでこなかったのも不思議といえば不思議です。

 似た行為として「教える」があります。「助ける」の中に「教える」が含まれることもあります。しかし「教える」と言いながら、「無理強いする」、はては「攻撃する」になってしまう場合も、個人レベルに限らず国家間でも生じてしまうのはご承知のとおりです。

 過不足ない援助とはどういうものなのか。そしてその進歩とはどう測れるのか、さまざまな「心の問題」が取りざたされる現在、「ほんまに心の問題なの?」といった根本的疑問を投げかけつつ、評論家的な診断ではなく、実践をともなう具体的な処方箋としての「たすける」科学がこれまで以上に必要とされています。

 今回のシリーズでは、応用人間科学5年間の成果ともいえる「助ける科学」を4名の教員が発表します。