2006年1月14日 (第2759回)

家族支援の裏表―因果論の呪縛の中で―

大学院応用人間科学研究科教授 団 士郎

 科学的で合理的なものの考え方をする、これが賢明な人の態度だと学んできました。義務教育に始まる学校教育全般は、まさにこの姿勢で貫かれています。迷信やまじない、先祖の因縁話などは、みな学校以外のところで聞かされたものです。ハリーポッターの通うような魔術の学校は私たちの側にはありません。

 この教育効果は絶大で、私たちの日常的思考はほぼ全てが原因の解明に向かうようになっています。「なぜこんな事になったのか?」「誰がやったのか?」。病気には原因があり事件には犯人がいる。トラブルは起こした責任を取るべき者がいるというわけです。

 しかし私たちの日常は、何となく解決したり、知らない内に治まったりすることがたくさんあります。そして終わってしまえばたいてい、その原因や正体に関心は持ちません。現実には「因果論に立脚した合理的、科学的」ではない問題解決が多く存在します。

 これを積極的に取り入れようとするのがシステム論的な考え方だと言ってもいいでしょう。だからといって、呪術や霊魂話ではありません。因果論とは別の、もう一つの人間行動科学のお話をします。