2014年6月7日 (第3096回)

震災マンガを読む

北九州市漫画ミュージアム 専門研究員 表 智之

 2011年3月11日、いわゆる「東日本大震災」が起きました。その爪あとの大きさに、私たちはまずは言葉を失い、しばらくして、被災地・被災者に何らかの形で力になろうと、社会のあらゆる部分で様々な働きかけが始まりました。マンガの世界も例外ではありません。

 当初は「こんな時にマンガなんて描いている場合じゃない」といった、一種の無力感がマンガ家たちの口から発せられもしましたが、やがて「自分がマンガ家である以上、マンガを通じて働きかけを行うことが一番役に立つはずだ」という決意が生まれていったのです。その結果、チャリティ出版やイベントの開催、ボランティアの一人としての被災地での復旧作業、そして作品の中でこの悲しみと痛みに向き合おうとする試みなど、マンガたちの様々な働きかけが生まれました。

 今回の講座では、東日本大震災に対するマンガ家たちの働きかけを紹介することを通じて、日本社会とマンガの関係を読み解きます。マンガがかつて「悪書」と呼ばれ、文化的に“低く”みられてきた歴史の中で捉え直した時、「震災マンガ」にどのような歴史的・社会的意義がみえてくるのか、考えていきます。