2014年6月14日 (第3097回)

原爆マンガを読む

京都精華大学マンガ学部 教授 吉村 和真

20140614

 昨年夏、島根県松江市で起きた騒動を発端に、「はだしのゲン」を学校図書館に置くか否かという騒動が全国的に話題となりました。往々にしてそれは、教育現場や歴史認識の問題、あるいは表現の自由を巡る問題として捉えられがちでしたが、いずれも表面的な議論ではなかったかと私は考えます。

 なぜなら、問題となった「はだしのゲン」が、小説や映画ではなく、ほかならぬマンガという表現/メディアだったという本質的な点に、それらの議論が迫り切れなかったからです。

 そうした現状をふまえ、今回の講座では、「はだしのゲン」をはじめとする中沢啓治の作品、そして、その中沢としばしば比較されるこうの史代の作品を素材に、「原爆マンガ」の精読を試みたいと思います。

 それぞれのマンガの特徴や作者の思想は、具体的にどのように表現されていたのか。作品とその掲載誌にはどんな関係があったのか。原爆マンガは私たちの「戦争の記憶」にどのような影響を果たしてきたのか…等々、会場で一緒に実物のマンガを読みながら考察してみましょう。