2014年7月12日 (第3099回)
ソマリアにおける紛争とソマリア沖海賊問題
神戸学院大学法学部 教授 杉木 明子
海賊は古くから「人類共通の敵」とみなされ、海賊問題を適切に対処することは政治指導者にとって重要な課題であった。アデン湾・ソマリア沖では、1990年代に海賊問題が発生し、2007年に海賊発生件数が急増した。ソマリア沖海賊問題の主な対策として、①海上警備と海賊の処罰に対する国際協力、②周辺諸国による海賊の取締り能力の向上、③ソマリア国内の取締能力向上と統治・司法機能の回復が必要であると考えられている。既に①と②に関する取り組みは進展し、一定の成果を収めている。しかし海賊問題を根本的に解決するために不可欠な③に関しては様々な問題が存在している。現在のソマリアは北西部の「ソマリランド共和国」(国際的には未承認)、北東部のプントランド、および南部という3つの地域に分かれている。2012年に発足した連邦政府は国際的には合法な「中央政府」と位置づけられているものの、全土を実効的に支配をしていない。
本講座ではソマリア海賊の実態とソマリア情勢を説明したうえで、海賊問題解決に不可欠な統治・司法機能の回復を実現するための「国家建設」の課題を示し、今後の対応を検討していきたい。