2014年7月19日 (第3100回)

「民主化」から20年を迎えた南アフリカ-変化と現状-

日本貿易振興機構 アジア経済研究所 副主任研究員 牧野 久美子

 南アフリカ共和国でアパルトヘイトが撤廃されてから、今年で20年になります。今年5月に行われた選挙では、アパルトヘイト後に生まれた世代が、初めて選挙権を行使しました。

 アパルトヘイト後、最初の大統領を務めたネルソン・マンデラ氏は、「虹の国」の理想を掲げ、国民和解と融和に努めました。世界で最も先進的といわれる、人権尊重と民主主義の理念を前面に掲げた新しい憲法も制定されました。解決不能に思われたアパルトヘイトをめぐる人種間の対立を、対話によって乗り越えた南アフリカは、世界から賞賛を浴びました。

 しかし、その後の南アフリカの歩みは、20年前の理想通りとはとてもいえません。あからさまな人種差別は、表向きはほぼ一掃されましたが、教育や労働市場における人種格差はいまも非常に大きなものがあります。加えて、ビジネスや政治の世界で成功し、富裕層となる黒人が増える一方で、まともな住居、水や電気へのアクセスもままならない人々も多く残され、黒人内部の格差も拡大しています。本講座では、アパルトヘイト撤廃による「民主化」から20年を経た南アフリカで、何が変わり、何が変わっていないのかを考えます。