2014年8月2日 (第3102回)
「学徒出陣」と大学の戦争責任
慶應義塾大学 名誉教授 白井 厚
先の大戦でドイツはユダヤ人を600万人殺したそうで、ずいぶんひどいなと思うが、中国の習近平国家主席は3月にドイツで、日本の侵略戦争で中国人は3500万人が死傷したと述べた。まさかと思うが、悲しいかな日本は効果的な反論をしないようである。日本が始めた戦争によって、日本人は軍民合わせて310万人が死に、おそらくアジア人は、3千万人くらいが非業の死をとげただろう。
開戦を決めた政府や軍は、これほどの犠牲者を予想したか?安倍首相も引き継いだ「村山談話」によれば、日本は国策を誤り、植民地支配と侵略戦争を行なった。だとすれば何故そんな国策に皆賛成したのか。厳しい思想弾圧は知っている。しかしいやしくも最高学府、真理の探究を業とする大学からは何の批判の声もなかったのか。
戦力となる兵の数、武器の質と量、軍需・戦略物資の生産と蓄積量などの統計を見ると、日米の比較だけでも20倍から90倍、石油の生産量においては500倍以上の差がある。白鵬と私くらいの筋力差があって、それを補うのは大和魂と鉄拳制裁と神風神話では、兵隊があまりにも可哀そう。更にそれを補おうとして、軍部は「学徒出陣」を強行したのか。その中で動揺する大学の姿は?
集団的自衛権から国防軍への道が示されている今日、当時の大学の苦悩から学ぶものは何だろうか。