2014年9月6日 (第3104回)
地形図でたどる鉄道の山越え
地図研究家 今尾 恵介
国家の近代化は鉄道の開通に始まったといっても過言ではない。従来の牛馬や船よりはるかに多くの人や物を迅速に目的地へ運ぶことができる近代交通機関の登場は、新たな産業をもたらし、人々の生活を変えていった。ただし重い列車に坂道を登らせるのは大変なことで、峠のあちら側まで線路をどのように通すかというルート選択の良否は、特に山国の日本では重要であった。
山を越えるために線路の設計者はトンネル、スイッチバック、ループ線を含む迂回線、歯軌条方式(アプト式等)などの中から、現地の地形の特性に合わせてそれらを適宜組み合わせて解決していった。設計する鉄道が幹線と観光鉄道では線形や勾配が異なるのは言うまでもない。本講座では、峠を越える鉄道がどのような経路をたどっていったかを、実際の地形図で個々に観察しながら、また時代による山越えの流儀の変遷なども織り交ぜながら、鉄道のたどった山越えを振り返る