2014年10月11日 (第3109回)

ヘーゲル「歴史哲学講義」を読む

立命館大学文学部 教授 高橋 秀寿

 ヘーゲルの『歴史哲学講義』は世界史の成立に重要な役割を果たしました。彼は世界が神によってではなく、歴史によって動かされることを証明し、歴史が動かずに停滞してしまった後進国と、盛んに動いて歴史の動きの頂点にいる先進国があることを世界史によって証明しようとしたのです。このような世界史は先進国が後進国を植民地として支配しすることを正当化し、後進国が先進国を追いかけることを使命とする歴史観を作り上げました。

 しかし、そのような歴史観はいまや克服されようとしています。ヨーロッパではヘーゲル的な歴史観に代わって、新たな歴史観が生み出されています。近年のホロコーストに対する歴史的な関心はこのことを示しているように思われます。このような新しい歴史観がいったい何であるのかを明確に認識するためにも、私たちはヘーゲルの世界史がいったい何であったのかを歴史的に振り返る必要があるといえましょう。

 こんな問題意識に基づいて、ヘーゲルの『歴史哲学講義』を熟読してみましょう。