2014年10月18日 (第3110回)

ベンヤミン「歴史の概念について(歴史哲学テーゼ)」を読む

立命館大学文学部 准教授 長澤 麻子

 歴史学はおもに過去のことがらについての学問です。過去のことがらはしばしば現在にその痕跡を残していて、私たちはそれを手がかりに過去のことがらを知ることができます。しかし、そのような過去の痕跡はあくまでも痕跡であって、過去の当時の姿そのままではありません。過去のことがらは、当然のことですが、現在の存在ではなく、時間的にすでに過ぎ去ったものです。では、そのような存在しない過去のことがらを、現在の私たちはいったいどのようにして理解しているのでしょうか。

 「過去の真のイメージは、ちらりとしかあらわれぬ。一回かぎり、さっとひらめくイメージとしてしか過去は捉えられない。認識を可能にする一瞬をのがしたら、もうおしまいなのだ」(野村修訳)とベンヤミンは言います。過ぎてしまったことは、それ以上、変わらず動かずとどまっているもののように、通常、私たちはイメージするのですが、ベンヤミンの過去の捉え方はそれとは少し異なります。

 現在生きている私たちの過去に対するかかわり方、歴史の可能性について、ベンヤミンの遺稿「歴史の概念について」を読み解きつつ考察してみたいと思います。