2014年11月8日 (第3112回)

古写真から読み解く昭和京都の街・建築・祭礼

立命館大学文学部・准教授 加藤 政洋

 下の写真をご覧ください。いつ、どこで、何を写した画像か、おわかりになる方はいらっしゃいますか? 江戸時代の大奥の女中を模した女性が、着物の裾を引きずりながら、道路の中央を歩き、「富鶴」と書かれた提灯を下げた女性と、法被を着た男衆が脇を固めています。これは、昭和35(1960)年7月10日、京都市東山区の縄手通りで、ある在野の花街研究者によって撮影された、「ねりもの」と称される祭礼の行列にほかなりません。「ねりもの」とは、祇園祭の期間中、7月10日と28日とに行なわれる御輿洗に際して、祇園花街の芸妓衆が仮装して祇園社(八坂神社)に参詣し、廓の内外を練り歩く行事でした。実のところ、「ねりもの」は昭和35年を最後に開催されておらず、結果として、この写真は歴史の後景に退く光景を写し取った貴重な一枚ということなります。

 今回の土曜講座では、古い写真や絵葉書を手がかりにして、昭和前期の街・建築・祭礼などを仮想探訪することで、京都の失われた景観と文化を読み解いてみたいと思います。

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