2014年11月22日 (第3114回)

『京都市明細図』に描かれた近代京都の街並み

立命館大学文学部・非常勤講師 赤石 直美

 歴史都市京都の町家の残る街並みは、世界遺産の寺社仏閣とともに、観光の対象として広く関心を集めていますが、現在の京都市街の原型は、明治末期を起点とすると考えられています。近世からの建物が残る一方、京都の街並みは、大正、昭和という時代の流れとともに形成されてきました。

 昭和初期から戦後直後の京都の様子を知るための貴重な資料の一つが、1927(昭和2)年に刊行された『京都市明細図』です。この地図は、2010年11月に京都府立総合資料館にて発見されました。一般への公開と共に、京都府立総合資料館の協力のもと、『京都市明細図』は約3年間かけてデジタル化され、様々な角度から描画内容を捉えることができるようになりました。御池通や堀川通、五条通が拡幅される以前の様子、改修前の鴨川や天神川など、その詳細な描画は、近代都市として京都の景観がどのように変化したのかを教えてくれます。

 現在の京都が形成される基盤ともいえる、昭和初期から昭和20年代の京都を『京都市明細図』を通じて考えてみたいと思います。