2014年11月15日 (第3113回)

昭和京都における郊外の役割

京都府立大学文学部・准教授 上杉 和央

 京都」といえば、どのような範囲をイメージしますか。もしかして京都府全体? それとも京都市全体? 

 おそらく、多くの人(特に「京都」以外にお住まいの方)にとって「京都」とは、京都駅や四条通付近を中心とした市街地と、清水寺や金閣といった名所、そして山並みや川といった自然から構成されるイメージ空間ではないかと思います。

 でも、ご存知のように有名な寺社仏閣の位置するのは郊外です。旧市街地とは離れた場所にあります。市街地と名所との関係は、洛中と洛外として理解することもできるかもしれません。確かに、江戸時代は「京都」の空間はそのような区分が可能でした。

 しかし、近代になると市街地の拡大と名所の多様化がおこり、洛中と洛外という境界概念は――理念上はともかく、空間的には――変化していきます。特に、大きな変化が起きるのは郊外の状況です。今回は、この郊外に焦点を当てて、近代、とくに昭和期の京都を考えていきたいと思います。