2014年12月13日 (第3116回)

東日本大震災に学ぶ「駆け込み寺」という知恵

立命館大学理工学部・教授 大窪 健之

 東日本大震災では、巨大な津波により公的な指定避難所ですら被災する事態となり、大規模な避難所不足が発生しました。そんな中で、社寺など地域の文化遺産を含む民間施設が、未指定ながらも避難所として活用され、被災者の生活を支えていたことが明らかとなりました。停電の中で備え付けのろうそくを灯したり、お供え物を崩して食料に転用したり、法要のための畳部屋を居室に流用するなど、社寺ならではの特性が活かされていたのです。

 災害に学び、今後の防災計画を策定するうえで、長い歴史の中でこれまで幾度もの災害をくぐり抜けてきた社寺を、万一に備えて地域コミュニティの臨時的な避難所に位置づけることができれば、新たな「駆け込み寺」として、防災拠点の確保に役立つと同時に、その文化的価値を後世に向けて継承することにも繋がるはずです。

 この講座では、社寺が東日本大震災の際に避難所としてどのように転用され、人々によって運用されたのか,避難所としての活用可能性と問題点について整理します。調査による実態把握から、今後に臨時の避難所として活用する際に求められる指針について、探ってみたいと思います。