2014年12月20日 (第3117回)

伝統構法木造建築物を未来につなぐ

立命館大学衣笠総合研究機構・教授 鈴木 祥之

 地域の気候・風土等に適応して発展・継承されてきた伝統構法木造建築物は、室内環境に優れ、環境への負荷が少ないなど伝統構法の良さが見直され、近年、伝統構法の家に住みたい、建てたいなどの要望が多くなってきています。

 しかしながら、伝統構法は、建築基準法に明確な規定がなく、現行の建築基準法の木造に関する仕様規定を満足しないことから限界耐力計算によって設計がなされておりますが、2007年の建築基準法改正による建築確認・審査の厳格化され、伝統構法の確認申請などが、現在、難しい状況におかれています。

 伝統構法木造建築物の危機的状況を打開したいと願う実務者からの熱い思いのもとに、近年、取り組んできました「石場建てを含む伝統的構法のための設計法」は、解析的・実験的な検討のもとに設計法案を国土交通省に提案することができ、現在、法制化に向けて動き出しています。写真は、設計法案や解析法の検証のために実施した実大振動台実験の試験体です。

 この「伝統的構法の設計法」を実務者が使えるようになり、伝統構法の技法・技術の継承と職人の育成が図られるとともに伝統構法木造建築物を未来につなぐことができることを願っています。

20141220