2015年4月18日 (第3126回)

『漢字 生い立ちとその背景』(岩波新書)を読む

立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所 客員研究員 高島 敏夫

 白川静の一般書第一作である『漢字 生い立ちとその背景』(岩波新書)についてお話し致します。この本が出版されたのが1970年4月25日。45年前のことになります。白川静はこの『漢字』という書物を引っ提げて彗星のごとく現われました。彗星のごとくといいますと若い人を連想するのが一般ですが、1910年生まれの白川60歳でのデビューです。それまで専門的な論文ばかり書いていた白川の名は一般には知られていなかったので、ほとんど無名といっても過言ではありませんが、白川にすれば予定通りのデビューだったといいます。その後矢継ぎ早に刊行される専門的な一般書によって、白川静が桁外れの大学者であることは、瞬く間に世間の知るところとなりました。そうした記念すべき書物なのですが、書き出しが難しいために挫折する人が多いようです。読む心構えあるいは勘所についても交えながら、白川静の考えたことの一端をお話ししたいと思います。