2015年5月9日 (第3128回)

情報アクセシビリティ入門―読書権と障害者への配慮

立命館大学先端総合学術研究科 教授 松原 洋子

20150509-1

 情報アクセシビリティとは、求める情報を使いやすい方法で誰もが利用できることを言います。たとえば、インターネット経由で手軽に利用できるようになった電子書籍。文字を拡大したり見やすい書体にしたりできるだけでなく、合成音声で読み上げさせることもできます。それによって、視覚障害などで印刷された本をそのまま利用できなかった人でも、電子書籍であればインターネットで購入後すぐにスマートフォンなどで「聴読」できるようになりました。このように情報通信技術の発達によって、障害があってもなくても手軽に情報を得られる社会が実現されつつあります。しかし、情報を求める人々の多様性への配慮が不足している社会では、技術の能力が生かされず、逆に人々の情報格差を拡大することにもなります。そして残念ながら日本の現状では、情報アクセシビリティを考慮した技術や社会の設計が不十分な状況です。

 今回の講座では、情報アクセシビリティについて読書権と障害者への配慮を中心にお話します。視覚による読書が困難な人々が読書をするために障壁を乗り越えてきた歴史をふまえ、現在の技術的・社会的な課題について考えたいと思います。