2015年9月5日 (第3137回)

ASEAN共同体の構築とメコン地域開発

立命館大学 名誉教授 西口 清勝

 東南アジアの国際河川であるメコン河の開発から始まったメコン地域開発は、近年国際的にもわが国においても大きな注目を集めてきている。その背景として以下の3つの理由を挙げることができる。

 第1は、ASEAN(東南アジア諸国連合)が現在取り組んでいる域内経済協力の喫緊の課題として今年度末までにASEAN共同体(AC)を発足させるということがある。このACを実現するためにはASEAN先発6か国とメコン地域の後発4か国(CLMV諸国:カンボジア、ラオス、ミャンマーおよびヴェトナム)との経済格差-ASEAN・Divideと呼ばれる-を克服することが必要であり、そのための最大の取り組みがメコン地域開発であることである。

 第2は、中国がメコン地域に積極的に接近しており(中国の「南進」)、日本がそれに対応するためのあらたな政策の策定と展開が必要になってきていることがある。

 第3に、グローバル経済危機(2008年)から日本経済が回復するために「アジア内需の取り込み」とりわけメコン地域へのインフラ輸出の重要性が高まってきているということがある。

 上記の事情をふまえた上で、メコン地域開発に果たすべき日本の役割について考察したい。