2015年12月19日 (第3151回)

震災復興の課題 ー二重債務問題、原発損害賠償制度などからー

立命館大学経済学部 教授 久保 壽彦

 東日本大震災から後3ケ月で5年を迎えようとしている。私が初めて被災地を訪れたのは震災後1年半を経てからである。最初に訪れたのは岩手県陸前高田市である。瓦礫は綺麗に山積みにされてはいたが、その他は一面原野といった状況であった。この地に震災前は市役所やJR高田駅を中心とした公共施設や商店街など市の中心市街地が形成されていたが、津波によって見る姿もなくなり、これが陸前高田市の現状であった。また、福島県南相馬市小高地区にも訪れた。東京電力福島第一原発事故に伴う放射能汚染によって、JR小高駅では帰宅できない自転車が駐輪場に通学時のまま放置され、また津波被害にも拘らず瓦礫処理さえなされていない地区を目のあたりにした。現状は、陸前高田市では将来の津波に備えて、8メートルのかさ上げの上に市街地を形成する工事が進捗し、日々復興の一部を確認できる一方で、南相馬市小高区は、高線量の放射能汚染によって震災時のままの状況が続いている。

 本講座では、上記の他被災地を数回訪問し、その中で体感した復興に伴う数々の課題の中から、二重債務問題、原発損害賠償制度の課題、その他課題について考えてみたい。