2016年1月9日 (第3152回)

印刷・出版からデジタルアーカイブへ

立命館大学 衣笠総合研究機構 准教授 金子 貴昭

 日本では、口から耳へ情報を伝える「口承」、書き写すことによって情報を記録する「書承」、版を作って複数部をプリントする「印刷」が、古くから情報の伝達手段として存在していました。江戸時代になると、不特定多数の消費者を対象に出版物を販売する「出版」が市井に浸透し、現代につながる基礎ができあがっていきました。

 書承や印刷・出版では「本」が形として残ります。現存する昔の本(古典籍)は、現代において貴重な歴史資料となるため、価値の高い資料を対象に、複製本を出版するビジネスが行われてきました。

 現在、図書館や博物館などでは、古典籍や文化財のデジタルアーカイブ構築と公開がさかんに進められています。これにより、オンラインでデジタル複製物を閲覧できる便利な世の中になった一方、複製出版ビジネスをおびやかす存在になってきています。

 本講座では、口承・書承・印刷・出版・デジタルアーカイブなど、情報伝達手段から見た日本のメディア史の概略を追いつつ、デジタルアーカイブの役割・複製出版の役割について、参加者とともに考えていきたいと思います。